集英社さんのヤングジャンプ・コミックス・ウルトラにて刊行されました。
作者は厘のミキ先生。
厘の先生は99年にデビューした後、角川書店さんや一迅社さん等で連載。
主に女性向の作品を描いていらっしゃるようです。
本作はジャンル分けが非常に難しい作品になっています。
作品自体はギャグを交えたコメディとして進むのですが、とにかく流血などのグロテスクな描写が多いだけでなく、登場人物の全てが異常な思考の元に行動する狂気の描写がされているのです。
主人公のチトセは学校で常に小さくなっている、いじめられていると言うほどではないけれども馬鹿にされている……と言うようなポジション。
ですが彼がからかわれたり絡まれたりといったピンチになるとすぐさま幼馴染の少女である文子が駆けつけて助けてくれます。
麗しきかな幼馴染……というような暖かな関係ではないのです。
なんとピンチになるたびチトセは携帯で文子に連絡。
コールを受けた文子はすぐさま駆けつけてからかわれていればフォローし、絡まれていれば乱入して撃退してしまうのです。
そんなこの時点でも異常と言える二人の関係ですが、当人同士はもっと異常な感情でつながっています。
チトセは助けてもらっているにもかかわらず、駆けつけるのが遅いだの、フォローするのにも言葉を選べだのと言うようにとにかく文子をぞんざい極まりない扱いをしているのです。
まるで自分を物のように扱っているチトセを文子はどう思っているかと言えば……
現状に満足しているどころか、自身も物として扱われたがっているのです!
チトセは文子なしでは精神の均衡が保てないほど頼り切っており、文子もまたチトセを守ることだけを考えて生きている……異常極まりない共依存関係になっているのでした。
ある日文子はチトセを守る為に大男と喧嘩をし、重傷を負ってしまいます。
そんなことも知らずにいつものように携帯に連絡するチトセですが、連絡がつきません。
やがて文子の倒れている現場にやってきたチトセですが、血まみれになって立ち上がることもできない文子を見てこのまま死んでしまったら自分を守るものがいなくなる、と診療所をやっている自宅へと連れて行くことにしました。
文子を背負って自宅へ向かう途中、少し前に橋の下で飢え死にしそうになっていたところを助けた少女に出会います。
その少女は一目見るなり文子は脳にも損傷があってもう助からない、と言い切るではないですか。
助けてくれと懇願するチトセに少女はあっさりと快諾。
荷物から取り出したナースキャップをかぶると魔法少女のごとく変身し、文子を抱きかかえると
全身の怪我を自分の体へと移したのです!
彼女の名はアテナといい、人の体の怪我を自らの体に移し、その後更に手持ちの注射器の中に移す、という能力を持つサイボーグナースなのでした。
この事件と出会いをきっかけに二人の運命は大きく変わっていくのです。
その後先ほどの「脳の損傷」が原因となって文子に異変が起こり始めます。
脳に障害が起こり、一番大切に思っていた記憶を失う……チトセのことをなんとも思っていない、「その他大勢」と認識してしまうようになってしまうのです。
そんな彼女の障害を回復することは普通の脳外科医ではとても不可能、そして担当する医療科以外を治す事のできないサイボーグナースには脳を担当するものが存在しない……
ですがただひとつ文子が元に戻る方法があることが判明します。
それはサイボーグナースに改造すること。
患者に奉仕しなければならないと言う制限が生まれますが、今までの文子に戻ることができるのだそうです。
チトセは自分との記憶をなくしたことによって文子が楽しそうに普通の女子高生生活をおくっている事を脳裏によぎらせ、
改造させることを決意したのでした!
ここからまた物語は大きく展開します。
サイボーグナースとなったことによってチトセへの愛を更に暴走させる文子。
心を治すナースがもし現れたらチトセのゆがみにゆがんだ自分への依存をも直してしまうかもしれないと考え、恐ろしい行動を取るのです。
更に明かされる今まで説明されていなかった世界背景、チトセに隠された真実。
そして文子がたどり着いた二人がずっといっしょにいるための答えとは。
もはやヤンデレ漫画の一言では片付かない、おぞましいストーリーが紡がれます……
そんなわけで本作は読み進めていけばいくほど薄ら寒くなる作品になっています。
主人公達を含めたありとあらゆる登場人物が狂気に包まれており、コメディであるはずなのに生半可なホラー漫画の数倍の恐怖を堪能できることでしょう。
ヤンデレに萌えることもできないではないのでしょうが、ちょっと俺の萌えの範囲は超えているような気がします!
それを差し置いても狂気に包まれた愛をめぐる精神模様は恐ろしいながらも目を離すことのできない出色の出来。
予想をはるかに越える狂った世界を楽しむのも良いのではないでしょうか!



